水害から建物と入居者を守れ! 賃貸経営者が知っておくべき豪雨・台風対策
ここ数年、集中豪雨や大型台風が毎年のように発生し、日本各地で大きな災害をもたらしています。なかでも2018(平成30)年は、観測史上最大の雨量となった「西日本豪雨」に加え、台風21号・24号の上陸など甚大な災害が相次ぎました。
こんな年は滅多にないと思いたいところですが、実は今年、その2018年夏の悪夢再来の可能性あり、という予測があることはご存じでしょうか。根拠は、赤道付近の海水温が変化する「ラニーニャ現象」。世界的な異常気象の要因と言われるラニーニャ現象が、今年は2018年とよく似た経過をたどっているというのです。あくまで予測に過ぎませんが、備えあれば憂いなし。今のうちに水害への備えを考えておきましょう。
建物を守る基本は「点検・清掃・修繕」
賃貸経営者にできる豪雨・台風対策として、まず挙げられるのは建物の点検と清掃です。一見地味ではありますが、一個人では河川の氾濫や土砂崩れを防げない以上、まずは建物を雨漏り・浸水・破損等から守ることを第一に考えるべきです。もちろん、点検で不安な箇所が見つかった場合は、大雨シーズン前の早期修繕が必須です。
▶屋根・外壁・バルコニー
建物内への浸水につながりそうなひび割れや塗装の剝がれ、シーリングの損傷等をチェックします。自分で目視点検もできますが、築年数が経っている場合や高所の点検が必要な際は管理会社や外壁修理会社に依頼しましょう。外壁のクラックや屋根の破損はもちろんですが、ベランダ・バルコニーの笠木部分のシーリングなども要確認です。
▶雨樋・側溝・排水桝
建物や敷地の排水機能も点検しましょう。内部に土や落ち葉が溜まってしまうと排水が減り、外壁への浸水や雨漏り、敷地内への浸水といった被害に繋がりかねません。また、雨樋そのものが土と雨の重みで壊れてしまうこともよくあります。こちらも高所作業が必要な場合は管理会社等に相談を。
▶「土壌」等で緊急時の備え
最近は局地的な大雨によって町の排水機能が追い付かなくなり、下水や雨水があふれてしまう「都市型水害」も頻発しています。低地や坂の下に物件がある場合は、できることなら「土嚢」などで水をせき止める用意をしておきましょう。
土嚢はホームセンターなどで入手できるほか、地域によっては役所が配布しています。ただし、たいてい土嚢の処分は自己負担となるため、使用後を想定して確保しましょう。
「火災保険」の見直し、水災・風災特約の検討を
最悪のケースを想定し、契約している「火災保険」も確認しておきたいところです。豪雨・台風対策としては、浸水被害などの保証してくれる「水災」、強風被害を保証してくれる「風災」の特約が必要ですが、何年も前に一括で契約して細かい内容なんて覚えていない、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。万一の事態に陥る前に、契約内容・補償内容を把握しておきましょう。
なお、特約の有無にかかわらず、地域の被災想定区域が分かる「ハザードマップ」は一度確認を。そして洪水・高潮・土砂災害などの影響をうけそうな地域に物件がある場合は、前述の特約付帯を検討しておくべきです。もちろん、物件が高台にある場合など過剰な付帯の不要な場合もありますが、それでも災害リスクとコストとを天秤にかけてみることは必要でしょう。
入居者の安全確保。状況に応じて協力要請も
申告な豪雨・台風被害を乗り切るには、実際に暮らしている入居者の皆さんに「命を守る行動」を取ってもらうことも必要です。また被害予防の面においても必要に応じて協力を仰ぎましょう。
▶ベランダの清掃・片付け
居室に続くベランダやバルコニーは、厳密には共用部にあたるものの、貸主・管理会社側でのコントロールがしにくい場所。鉢植えや物干竿が強風で飛ばされる危険もあり、台風時には入居者に私物の処理をアナウンスしたいものです。
また、意外な浸水被害の原因となるのがベランダの雨水排水口。ここにゴミが詰まって雨水が流れなくなると、ベランダがプール状になり、上層階であっても掃き出し窓から居室内への床上浸水が起こります。危険性を伝え、入居者には事前の清掃を促しましょう。
▶窓関連の点検・対策
風雨による被害の突端となりやすいのは、やはり窓。豪雨・台風が予想される際には、窓ガラスやサッシの点検、雨戸や窓用シャッターの動作確認をお願いしましょう。
また、台風時は飛来物対策として、窓ガラスの「飛散防止フィルム」を各戸に配布するのもいいかもしれません。入居者の安全や物件を守ることになるのはもちろん、入居者満足度の向上にも一役買ってくれるでしょう。
三位一体となって災害を乗り切る
どれだけ文明が発達しても、人類にとって自然災害はいまだ脅威そのものです。個人でできる対策は少なく、また、守れるものも多くはありません。だからこそ、万一の際は事前の備えと、賃貸経営者・入居者・管理会社が三位一体となって協力し合うことが重要です。平和な夏になることを祈りつつ、できる対策は早めに行ない、大雨シーズンを万全の体制で迎えましょう。

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